学校が作る計画の見直し    


  学校が作成しなければならない計画等は24種類、38件。特別な支援を要する生徒ごとに作成する指導計画や教育支援計画等を含めればさらに多くの計画を作成しなければなりません。計画等の一覧表はこちらをご覧ください。毎年これだけの量の計画を見直し、作成し直すことに日本の教員は非常に多くの時間を費やしています。
  学習指導要領やその解説には、全体計画や指導計画を作成する際に記入すべき内容や記入することが期待される内容が、盛りだくさんに示されています。〜との関連を図り、〜を考慮して、〜の実態を踏まえて、〜に配慮する、〜との連携方針等を記述する、〜との連携の方法を示す、〜における指導との関連を示す、〜を充実させるための具体的な計画等を記述する、〜の相互の関連性を明確にする、などなど。これらをすべて盛り込んだ全体計画や指導計画を作成すると、内容もページ数も多くなり、作成にも多くの時間が費やされることになります。また、教育委員会が示したひな型のためか、多くの内容を図表形式に美しくまとめ上げた計画を作成することが主流となっていて、その形を整えるためにまた多くの時間が必要となっています。
  しかし、複雑で詳細な計画は、その作成自体が目的化し、実際の教育活動の実施や振り返りに活用されにくいことが指摘されています。
  教員の事務的な仕事の量が世界一多く、それが勤務時間を世界一長くしている大きな要因となっていることを踏まえ、中央教育審議会は「学校における働き方改革に関する最終答申」において次のように述べました。全文はこちらをご覧ください。

中央教育審議会答申 2019(平成31)年1月25日 P.34〜35

4.学校が作成する計画等の見直し

○ 各学校は、法令等の定めにより、学習指導、生徒指導、学校運営等に関する学校の全体計画や個別の児童生徒に対する計画を作成することとされているが、これらの計画作成業務には、計画に係る調査・照会や、計画間の整合性の調整も含め、多くの時間を必要としている。
 また、過度に複雑かつ詳細な計画を作成した場合、計画作成自体が自己目的化し、PDCAサイクルの中で活用されず、教育活動の質の向上や、保護者や関係者との認識の共有化という本来の目的を達成できなくなるおそれもある。

○ 文部科学省においては、特別支援教育、日本語指導、不登校児童生徒といった個々の児童生徒に応じた個別の支援計画を一つにまとめて作成するひな形を平成30 年4月に示したところであるが、今後は、学校単位で作成される計画についても、学習指導要領や法令で必須とされているものを中心として、例えば、個別の計画を一つ一つ詳細に作成するのではなく、それぞれの内容を簡素化し、複数の計画を一つにまとめて体系的に作成するなど、真に効果的な計画の在り方も示すべきである。

○ 教育委員会においては、学校に作成を求めている計画等を網羅的に把握した上で、スクラップ・アンド・ビルドの視点に立ち、整理・合理化する。また、教育委員会が計画等のひな形を提示する際には、過度に複雑なものとせず、PDCA サイクルの中で活用されやすいものになるよう心がけるべきである。
 また、文部科学省や教育委員会が各学校に対し、新たな課題への対応を求める場合には、安易に新たな計画の作成を求めるのではなく、まずは既存の各種計画の見直しで対応することを基本とすべきである。

  この答申を受けて文科省は、通知「学校における働き方改革に関する取組の徹底について」で次のように述べています。全文はこちらでご覧ください。

文科省通知 学校における働き方改革に関する取組の徹底について
                          2019(平成31)年3月18日 P.13


(4)学校が作成する計画等の見直し

@ 学校単位で作成される計画については、業務の適正化の観点や、計画の機能性を高めカリキュラム・マネジメントの充実を図る観点から、計画の統合も含め、計画の内容や学校の実情に応じて真に効果的な計画の作成を推進すること。

A 各教科等の指導計画や、支援が必要な児童生徒等のための個別の指導計画・教育支援計画等の有効な活用を図るためにも、計画の内容の見直しや学校の実情に応じて複数の教師が協力して作成し共有化するなどの取組を推進すること。

B 教育委員会において、学校に作成を求めている計画等を網羅的に把握した上で、スクラップ・アンド・ビルドの視点に立ち、その計画の必要性を含め、整理・合理化をしていくとともに、教育委員会において計画等のひな形を提示する際には、過度に複雑なものとせず、PDCAサイクルの中で活用されやすいものになるよう取り組むこと。各学校に対し、新たな課題に対応した計画の作成を求める場合には、まずは既存の各種計画の見直しの範囲内での対応を基本とすること。

  一言でいえば、多くの時間をかけて過度に複雑で詳細な美しい形の計画を作るのはやめて、真に機能的で、PDCAサイクルの中で活用することのできる計画を、あまり時間をかけずに作りましょうということです。その際、いくつかの計画を1つの形にまとめてもよいし、学習指導要領や法令で必須とされている内容に絞って簡素化することも考えられるということです。
  学校現場には、この趣旨を積極的に受け止めて、これまでの形にとらわれず、真に機能的で、活用しやすい計画を作成して教育効果を上げるとともに、学校における働き方改革を推進していくことが期待されます。