働き方改革 1   

           

 1 なぜ働き方改革が必要か
 2 民間の働き方改革
 3 教員の労働条件
 4 教員の労働実態
 5 世界の教員との比較
 6 学校における働き方改革
 7 働き方改革推進のための振り返り用紙
 8 だんざ出版からのささやかな提案

 9 給特法改正・業務量管理指針
10 給特法改正・年間変形労働時間制
※ 学校における働き方改革に関する流れ

  少子高齢化・人手不足・長時間労働による健康被害・過労死などが深刻な社会問題となる中、政府は働き方改革を推進しています。学校現場でも教員の長時間勤務や過労死への対応が緊急の課題となっています。
  このページでは、働き方改革についてまとめました。学校における働き方改革が実を結び、全ての教員の皆さんがワークライフバランスのとれた豊かな教職生活を送れますよう祈っています。なお、働き方改革の必要性については、主に政府等の考え方を参考にしてまとめたものです。

 
     
   1 なぜ働き方改革が必要か    
   

  下の図は1990年から2065年までの日本の人口ピラミッドの変化です。現在、勤労者2人で高齢者1人を支えている状態ですが、この予測通りに少子高齢化が進めば、2065年には勤労者1.2人で高齢者1人を支えることになります。 

  生産年齢人口の減少は、すでに深刻な人手不足を招き、長時間労働による健康被害や過労死が社会問題となっています。育児や介護に時間を取られ、働きたいのに働けない人や、自分や配偶者が長時間労働に縛られ、子どもを産みたいのに産めない人もたくさんいます。そしてその現状がさらに少子高齢化を加速するという悪循環に陥っています。

  この悪循環を断ち切るにはさまざまな社会変革が必要です。その一つが、長時間労働をなくし、多様な働き方を選択できる社会を実現することです。長時間労働をなくすことによって、家族が協力して育児や介護に使う時間を生み出すことができます。あるいは、社会的活動や教養を高める活動等に時間を使って私的な生活を充実させ、仕事にも清新な気持ちで、能率的に、かつ新たな発想をもって取り組めることが期待されます。
  一般に、長時間の残業をすれば仕事の効率は悪くなることが分かっています。経営者は効率の悪い残業に、割増賃金を支払わなければならないのです。効率的に集中して働き、できるだけ残業をなくすことが求められているのです。一方では、残業が少なくなった分、私的に使える時間は増えたが、残業手当が減って給与が下がったということが既に起こっています。これも早急に取り組むべき課題です。生産性を向上させ、減った残業代を社員に還元することが求められます。経営者の社員確保を含めた経営戦略と労働組合の力にかかっているとも言えるでしょう。長時間残業を減らすと同時に収益を拡大し、その分を社員に還元して成功している会社も現実に出てきています。

  育児、介護、その他様々な事情からフルタイム労働につくことが難しい人々は、フルタイムより待遇の良くないパートタイムなどの仕事につくか、仕事につかないかの選択を迫られてきました。これは15〜64歳の就業率が70%代 (2018年 男性84%、女性70%、総務省統計局資料より) にとどまってきた大きな要因の一つと考えられます。このため、長時間労働をなくすとともに、パートタイム、派遣社員など非正規社員の公正な待遇を確保することが、働き方改革の大きな柱となっています。

 長時間労働是正の必要性については、こちらもぜひご覧ください。(衆議院厚生労働委員会2018.06.12)
 
     
    2 民間の働き方改革      
          

  2018(平成30)年に働き方改革関連法が成立しました。これを通して政府が推進しようとしている働き方改革の大きな柱は、次の3つです。
  
@ 長時間労働の是正
  
A 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
  
B 多様で柔軟な働き方の実現
この3つの内容は次のとおりです。

@ 長時間労働の是正

  時間外労働の上限は原則として、月45時間、年360時間と法で定められました。例外的に月100時間、年720時間まで認められますが、複数月の平均が80時間以内、45時間を超えていいのは年に6カ月まで、という限度があります。
 

有給休暇

時間外労働の上限
 
          

有給休暇

時間外労働割増賃金率

  時間外労働割増賃金は、月60時間までが25%以上増し、月60時間を超えると50%以上増し、法定休日(週1日)に勤務させると35%以上増し、深夜(22時から5時までの間)に勤務させると25%以上増しです。これは以前から変わっていないように見えますが、月60時間を超えると50%以上増しという部分が、これまで中小企業には適用されていなかったのですが、2023(令和5)年から適用されるようになります。労働者の70%以上は中小企業で働いているのですからこの効果は大きいと言えます。

 
   

  また、これらの規定を厳格に実施するとともに、労働者の健康管理にも役立てるため、全ての人の労働時間の状況を客観的な方法(タイムカードなど)で、正確に計測・記録することが義務となりました。

 
          

  有給休暇については、10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者に対して、毎年5日以上を、時季を指定して与えることが義務化されました。
  勤務間インターバル制度(前日の終業時刻から翌日の始業時刻までの間に一定の時間を設ける制度)の義務化を求める声もありましたが、これは努力義務にとどまりました。
  これらの施策によって長時間労働が是正されれば、労働者の健康が増進され、育児・介護、その他の私的な時間も取りやすくなることが期待されます。

有給休暇

有給休暇取得の義務化
 
   

A 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
  正社員とパート、派遣などの非正規社員との間の不合理な待遇の差をなくすことがパートタイム・有期雇用労働法で規定されました。待遇の差が合理的か不合理かを考える指針としては同一労働同一賃金ガイドラインが示されています。育児・介護、その他の事情でフルタイム労働が困難な人がパートや有期雇用で働いても、不合理なほど不利になることはありませんという状態を目指しているわけです。
  また、正社員と非正規社員との間に待遇の差を設けた場合、雇用主はその差が合理的なものであることを説明することが義務となりました。労働者がこの説明に納得できない場合、無料・非公開の紛争解決手続き(行政ADR)を整備することが行政の義務となります。
  これらの施策によって、非正規雇用労働者の待遇が改善され、さまざまな事情から就労をあきらめていた人が就労しやすくなることが期待されます。

B 多様で柔軟な働き方の実現
  多様で柔軟な働き方については、
@ A を通して実現を図るほか、次のような施策も決まりました。

 
   

 ●フレックスタイム制の労働時間清算期間が3カ月に延長されました。これによって、フレックスタイム制で働いている労働者は、私的に使える時間をこれまで以上にまとめてとることができるようになります。
 ●高度プロフェッショナル制度が新設されました。これは、一定の条件下で、好きな時に好きなだけ働いて、労働時間に関係なく成果で給料をもらう高度専門職です。時間外労働時間の上限規定も、それに対する割増賃金の規定も、休憩や休日についての一般的な規定も、全く適用されません。このため、労使委員会による決議、労働基準監督署への届け出、本人の同意など、さまざまな条件が設定されています。

 この項の図表4枚は、厚生労働省の「働き方改革パンフレット」からの引用です。

フレックス

フレックスタイム制の
労働時間の清算期間が3カ月に
 
   

  世の中ではこのように働き方改革がすすめられている一方、教員の労働条件や労働実態はどうなっているのでしょうか。そして、学校における働き方改革は進んでいるのでしょうか。

 
           
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