働き方改革 4   

 1 なぜ働き方改革が必要か
 2 民間の働き方改革
 3 教員の労働条件
 4 教員の労働実態
 5 世界の教員との比較
 6 学校における働き方改革
 7 働き方改革推進のための振り返り用紙
 8 だんざ出版からのささやかな提案
 9 給特法改正・業務量管理指針
10 給特法改正・年間変形労働時間制
※ 学校における働き方改革に関する流れ

  中学校教員の長時間勤務の大きな要因の1つが部活動です。それは、課外活動 (部活動) 時間の国際比較の結果 (下のグラフ参照) からも明らかです。また、2016 (平成28) 年の教員勤務実態調査では土日の学内勤務が1日平均3時間22分となっていて、土日における部活動が教員の時間外勤務を大幅に増加させていることがうかがわれます。休日の部活動を長くさせている要因を取り除くことが、教員の長時間勤務を解消するためには不可欠と言えるでしょう。

 
    
   8 だんざ出版からのささやかな提案    
   

  勤務時間外の部活動に対しては特殊勤務手当が支払われます。その支給基準は都道府県又は指定都市が条例等で定めていますが、その元になるのは国の義務教育費国庫負担金の算定基準です。この算定基準はこれまで「休日4時間程度 3,600円」でしたが、運動部活動総合ガイドラインで休日の部活動は長くても3時間程度と示されたことから「休日3時間程度 2,700円」に改正されました。

一週間の部活動の時間
OECD TALIS2018より再掲

  この改正を受けて都道府県や指定都市では、2019 (平成31) 年4月から一斉に支給基準を改正しました。例として指定都市であるA市の改正の内容を見てみましょう。下の表がA市の改正内容です。

指定都市であるA市の改正の内容

  改正前後のA市の基準をもとに、中学校教員が休日に部活動を指導した場合の時間とその時給との関係を計算した結果が下のグラフです。

  改正前は、4時間指導したときにピークがきていて、休日に部活をやるなら少なくとも4時間は頑張りましょうという誘導になっていたと考えられます。改正後はピークが3時間のところに来ましたので改善とは言えますが、それでも、少なくとも3時間は頑張りましょうという誘導としてはたらくことは否めません。
  「2時間やって350円もらうよりは、あと1時間頑張って2,700円もらおうか」と考えるのはとても自然なことです。

改正前後の時給

  このような支給基準は、ガイドラインの「休日の部活動は長くても3時間程度」という規定とやや矛盾しているように思えます。さらに、家事・育児・介護・その他の事情で「2時間くらいなら何とかなるけど3時間はちょっときつい」という教員にとっては、では時給175円で我慢しなさいと言われていることになります。これは働き方改革の目標である「公正な待遇の確保」や「多様で柔軟な働き方の実現」という精神にも、矛盾しているように思えます。ここまでA市の例を見てきましたが、どこの都道府県や指定都市も同じような支給基準となっているようです。
  そこで、だんざ出版からの提案です。勤務時間外における部活動指導手当の支給基準を次のようにしてはいかがでしょうか。

休日、平日に関わらず、勤務時間外における部活動指導手当の支給基準を次とおりとする。
  30分ごとに450円を支給する。
  ただし、30分に満たない時間は切り捨てる。
  また、3時間を超えた場合は、2,700円とする。

  この支給基準での時給を改正後のA市と比較すると右のグラフのようになります。
  30分未満を切り捨てるという部分に不満を感じる方もおられるかも知れませんが、これ以上小刻みな支給というのも事務手続き上煩雑かと考えられますので、我慢してください。
  このような支給基準にすれば、30分以上3時間までは同じ時給となり、さまざまな事情で短時間しか部活動ができない教員も、平等な待遇を受けられます。また、無理に上限の3時間まで頑張ろうとする気持ちが消えて、結果として部活動による時間外勤務が短くなる効果が期待できます。

だんざ案の時給

  国が「休日3時間程度 2,700円」という基準を定めているのに30分刻みの基準を作るなど許されるのか、という心配をする方もおられるかも知れませんが、国は「運動部活動総合ガイドラインの取組の徹底について」の5で「部活動指導手当の支給基準の時間の区分も見直すなど,柔軟に対応願います」と述べていて、心配はありません。
  上に提案したような支給基準とした場合に、部活動による時間外勤務がどの程度減少するのか、あるいは増加するのか、それによって財政負担がどの程度変化するのか、ぜひ知りたいところです。都道府県や指定都市の教育委員会の皆さん、試験的にでも一度導入できないか検討してみてください。この案で時間外部活や財政負担の縮減が見込めないと判断される場合は、最低支給時間を1時間とする、30分ごとの支給額を引き下げるなどの調整も可能だと思います。ぜひ工夫して、導入していただきたいと思います。

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